想いをつなごう。その人の、その先へ。ダスキン60周年記念

社長メッセージ

「想いをつなごう。その人の、その先へ。」
想いをつないで、未来に挑戦しつづけます

株式会社ダスキン 代表取締役 社長執行役員 大久保 裕行
60周年記念ロゴ

当社は、2023年11月16日に創業60周年を迎えました。今日まで60年以上にわたり、事業を支えていただいたお客様をはじめ、ステークホルダーの皆様の温かいご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。

創業60周年を機に経営の原点に立ち返ることが大切

創業60周年を迎えるにあたり、私は社員に二つのことをお願いしました。一つは60年という節目にあたって、創業の原点に立ち返り、創業者の想いに至ることが大切であるということです。「我の喜びが他の喜びになり、我も他も喜ぶ」という創業者の言葉があります。これは、「お客様、そしてともに働く仲間、家族の喜びが私自身の喜びになる」ということであり、“ 自利利他”の考えに通じるものです。

現在、当社は複数の事業を展開しておりますが、お客様の暮らしや心が豊かになることを願い、それぞれの事業が連携し商品・サービスを提供しております。これは「お客様の喜びを第一」とする創業者の想いに基づいており、当社のフランチャイズ契約には「経営理念に賛同する」ことが加盟の条件になっています。経営理念に賛同していただき、ともに歩んでいただくことがすべての前提であるからこそ、創業60周年の節目に全員で経営理念に想いを馳せることが大切と考えています。

そして、もう一つは、社員一人ひとりが未来に向けてどのように歩んでいくかを考えることです。60周年の記念ロゴに、「想いをつなごう。その人の、その先へ。」というタグライン・メッセージを添えました。これから先の不確実性の高い時代において、環境の変化に柔軟に対応しながらダスキンならではのホスピタリティあふれる対応が今まで以上に大切になってくると考えています。従業員一人ひとりが自ら考え、お客様のお役に立てる商品・サービスを提供し、そして喜んでいただけるか、心でお客様の想いを受け止め行動につなげて、未来に向けたお役立ちをさせていただきたいと考えています。

既存事業を強化するとともに、お役立てできる領域の拡大にも挑戦

近年、個人の嗜好が多様化し、また、デジタル技術が進展する中で、それらに合わせた商品・サービスの提供が必要となっています。とくに当社は、お客様との直接対面を通じたカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を大切にしています。

購入前、購入時、購入後の一連の顧客体験の中で購入前と購入後の体験についてはデジタル技術を活用する一方、購入時の体験は創業来のフェイス・トゥ・フェイスの強みを生かしたお客様との接点をこれからも大切にしていきます。こうした取り組みを通じて、お客様への提供価値を更に進化させていきます。

そして、社会のあり方が大きく変わる中で、既存事業の提供価値を更に高めるとともに、新たな領域でもお役立てできるよう挑戦していきます。直近では、2023年11月に300を超える子育て支援施設の保育園や学童クラブなどの運営を手掛ける株式会社JPホールディングスと業務提携契約を締結いたしました。当社はモップや玄関マットのレンタル、家事代行サービスなどを通じて、ご家庭のニーズにお応えしてきた実績があります。子育てしながら働く方々が、安心して働き、暮らせる生活環境(ゆとりの時間)の提供をはじめ 既存事業とともに新たな価値の創出を目指していきます。この「子育て支援領域」への参入は、ダスキンが永くお客様に社会に必要とされ続けるための大きな挑戦となります。

また、同じく新たな挑戦として、ミスタードーナツやかつアンドかつを展開しているフード事業ではイタリアンレストラン「ナポリの食卓」等を運営する株式会社ボストンハウスの持株会社である健康菜園株式会社を2024年1月に完全子会社化しました。立地や顧客特性に合わせて、その立地に最適なブランドを提供しお客様に「しあわせな時間」を提供していきます。「ナポリの食卓」のフランチャイズ展開も踏まえて、事業拡大を図っていく考えです。

原材料や人件費などが高騰する中で、生産性の向上により収益力を強化

経済環境については、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が第5類感染症に移行し、社会活動が正常化に向かいました。アフターコロナの中でもっとも注視しているのが、生活スタイルの変化です。フードグループではテイクアウトやデリバリーの需要動向を見据えて、対応していく必要があります。また、原材料の高騰が続く中で、安定調達も重要な課題と認識しています。ミスタードーナツの主原料である小麦粉については、一時期に比べると価格は安定してきましたが、一方でその他の原材料は引き続き円安などの影響も受けて高騰しています。加えて、人手不足等を背景に人件費も高騰していることから、生産性向上に取り組んでいます。

一方、訪販グループに関しては、コロナ禍で影響を受けていた事業所が回復基調にあることから、こうしたお客様に対する営業に注力しています。併せて、家庭向けサービスにおいても外出機会が増えた中で、家事時間の短縮や効率化のニーズが高まっており、お客様のライフスタイルに応じた提案活動を強化しているところです。直営店及び関係会社で検証をスタートした家庭用営業専任組織による活動は、2024年3月期に加盟店にも展開をはじめ、累計で約2万7,000件の新規契約につながりました。今後、更に導入加盟店を拡大しお客様へのお役立ていただける機会を増やしていきます。

なお、計画に沿って進めてきたマット・モップ商品へのRFID(電子タグ)の取り付けが概ね完了したことから、従来、手作業で数えていた検数作業がリーダーで一括読み取りができるようになり、大幅な業務の効率化が可能になります。こうした生産性向上を通じて収益性を更に高めていきます。

時代が変化する中で「ONE DUSKIN」としての使命が重要に

長期戦略「ONE DUSKIN」については、それぞれの事業が強みを発揮するとともに、連携を通じてお客様に対するお役立ちを追求しています。その成果を発揮した一つの例が、コロナ禍でのワクチン接種会場の設営及び運営です。イベントの企画及び用品のレンタル等を行うレントオール事業を中心に、施設衛生サービスを手掛けるサービスマスター事業、衛生用品などのレンタル・販売を行うクリーンサービス事業が一体となって会場全体の衛生管理をトータルで提案できるサービスを提供することができました。また、地震や台風など自然災害が頻発する中で、当社は、避難所開設後の衛生状態をサポートする清掃サービス、衛生関連商品等のレンタルを行う「防災サポートサービス」の提供を行っています。2024年3月末時点で75自治体と協定を締結しています。レントオール事業をはじめとする各事業が各自治体と密接に連携し、地域の安全・安心に貢献していきます。

今後、社会やお客様の課題に応じて、各事業が連携して価値を提供していくためには、フランチャイズ本部と加盟店との良好な信頼関係の構築もまた重要であると認識しています。これまで以上に密接な関係を築き、「ONE DUSKIN」としての価値創造をお届けしていきたいと考えています。

将来の経営基盤構築に向け、中期経営方針2022最終年度は着実に成果を上げる

中期経営方針2022につきましては、計画通りに進捗しています。2024年3月期は、増収減益となりましたが、これはRFID(電子タグ)取り付けに伴う大幅な原価増など計画に沿ったものです。2025年3月期は訪販グループにおける家庭用営業専任組織の取り組み拡大やケアサービスの出店強化、フードグループは引き続き魅力的な商品の提供及び積極的な新規出店を行うとともに、RFIDを活用した業務の効率化が進む上、先行投資の原価が減少されることから、ROE6% 以上をはじめとして目標数値を着実に達成していきます。

中期経営方針のテーマの一つである「事業ポートフォリオの変革」については、既存事業における収益性の強化を推し進めるとともに、事業開発やM&Aを通じた新たな事業の創出に取り組んでいます。

2025年3月期は、冒頭でお話しした60周年記念ロゴのタグラインである「想いをつなごう。その人の、その先へ。」の具現化に力を注いでいく考えです。目の前のお客様のお役に立つことはもちろん、更にお客様の先におられる家族、知人にもダスキンの価値を提供していきたいと考えています。

また、海外展開については、東アジア、東南アジアを中心に事業を展開しています。ダストコントロール事業とケアサービス事業については、台湾、中国の2地域で事業を展開中です。そして、ミスタードーナツにおいては現在5地域で展開しています。2024年4月に中華人民共和国香港特別行政区での展開を目的として、Dragon CircleEnterprise Limitedとマスターフランチャイズ契約を締結し、10月に1号店のオープンを予定しています。日本で磨き上げたビジネスモデルで国境を越えたお客様の暮らしを豊かにすることに貢献していきます。

中期経営方針の二つ目のテーマである「経営基盤の構築」については、人的資本経営を重視し、人材の育成に取り組んでいます。具体的には、全社員が受講できる教育プラットフォームを構築しました。とくにDXに関する全社教育を推進しています。大事なことは、すべての社員が学び続けて、自己成長していくことにあります。知識やスキルを融合していきながら、各自の個性と能力を最大限に生かしていくことによって、ダスキン全体としての新たな価値創造が可能となります。

また、ガバナンス実効性の更なる向上については、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取締役会での議論を深化させ、経営資源の適切な配分を図ります。

三つ目のテーマである「社会との共生」については、サステナブルな社会と経営の実現に向けた取り組みを加速しています。訪販グループでは、EV(電気自動車)のテスト検証を行い、その成果を踏まえて、直営支店の営業車両から順次、EVへの切り替えを進めていく計画です。また、ミスタードーナツの物流センターや他社から発生する廃棄原材料で発電するバイオマス電力を使用することで、本社ビルを含む周辺施設5拠点すべての電力を実質再生可能エネルギー100%へ切り替えていきます。引き続き「ダスキン環境目標2030」の実現に向け、取り組みを進めていきます。

今期は長期戦略「ONE DUSKIN」最終年度となります。すべての事業が一つになってホスピタリティあふれる対応ができる企業を目指し、そして事業を通じた社会貢献の実現のために、ステークホルダーの皆様への感謝の気持ちを忘れずに、中期経営方針2022の施策を着実に実行していきます。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2024年7月
株式会社ダスキン
代表取締役 社長執行役員
大久保 裕行