想いをつなごう。その人の、その先へ。ダスキン60周年記念

社長メッセージ

創業60周年を節目として
これまで以上に「喜びのタネまき」を
世の中に広げ、
企業としての更なる進化を
追求していきます。

株式会社ダスキン 代表取締役 社長執行役員 大久保 裕行

当社は、2024年3月期の年次モットーを「まごころ届けて60年、自ら考え行動し、喜びのタネをまこう」としています。創業60周年を迎えるにあたり、「喜びのタネまき」という創業の原点に戻り、加盟店や生産事業所を含むダスキンファミリーが一丸となって、取り組んでまいります。一人ひとりが「思い」を持って、自ら考えて行動に移していくことが、すべてのステークホルダーの皆様の期待に応えることになり、企業価値の向上につながると考えています。

厳しい経営環境の中、グループでの結束力、行動力を発揮した一年

ここ数年のコロナ禍により、日本経済は事業活動に制約がかかり経済的な影響を受けました。また、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、エネルギー価格や原材料価格の高騰、不安定な外国為替相場などで収益面にも打撃を受けました。当社も厳しい局面が続いたものの、一方で実感したのはグループの結束力であり、厳しい事態に対して総力を挙げて取り組む行動力です。加盟店で働く方々をはじめ、当社の社員、当社に関わるすべての方々が、創業以来大切にしてきた「喜びのタネまき」という理念を共有し、課題の解決に向けて取り組みました。その結果、厳しい一年であったものの、すべてのセグメントで増収となりました。理念を共有し、行動ができることは、当社にとって大きな財産であると改めて実感しました。

訪販グループの主力であるモップ・マット商品は、2022年7月に約30年ぶりとなる価格改定を行いました。お客様のもとへ訪問し、対面接客を通じて培ってきたコミュニケーションの積み重ねが、価格改定に対するご理解につながりました。ミスタードーナツの商品についても、2022年3月と11月の2回にわたり価格改定を行いましたが、店舗での対面によるホスピタリティを持った接客対応に努めてきたことで、お客様に概ね受け入れていただけたと実感しています。多くのお客様からご理解を賜り、感謝の気持ちでいっぱいです。

「中期経営方針2022」の取り組みは、加盟店とともに着実に進んでいます。訪販グループでは、最重要領域と位置付けている衛生領域において除菌・抗菌及び抗ウイルスの衛生商品・サービスの売上高構成比率を2025年3月期に55%まで引き上げる計画でしたが、すでに一年目の2023年3月期で目標をクリアしています。フードグループのミスタードーナツでも最高水準の素材と技術を持つブランドとの共同開発「misdo meets」等の新商品販売が好調に推移したことに加え、新規出店等により稼働店舗数が増加したことで、売上高・営業利益とも前期比を上回ることができました。

リアルとデジタルの両面からCX(顧客体験)の向上を目指す

お客様への更なるサービス向上を目指して、デジタル技術の活用に注力しています。このことにより、商品・サービスの提供時にとどまらず、購入前、購入後においてもCX(顧客体験)を向上させていく考えです。

訪販グループではお客様向け会員サイト「DDuet(ディーデュエット)」を運営しており、会員数は150万人を超えています。サイトでのご注文機能だけでなく、DDuetアプリのマイページ機能では、お客様に応じた商品・サービスのご案内をしております。一方、フードグループでは「misdoネットオーダー」を導入し、スマートフォンなどを通じて事前に注文することで、レジに並ばなくても商品を受け取れる仕組みを構築しています。こうした取り組みを通じて、お客様との対面営業の強みに加えて、デジタル技術により24時間対応できる要素を掛け合わせることで、新たな接点や関係性を築けると考えています。

また、訪販グループでは、デジタル技術の活用に力を入れる一方、お客様との直接対面の機会を増やす活動も展開しています。第61期は約250名の営業専任組織により、家庭市場の開拓に乗り出しました。ここ数年、モップ商品の契約数は減少傾向でしたが、直営店と関係会社での検証では契約数は純増に転じています。この結果を踏まえ、対面営業活動を全国の加盟店で展開するとともに、家庭市場のモップのみにとどまらず、事業所市場でも同様の展開を進めていく考えです。

加えて、フードグループのミスタードーナツでは、主に都市圏でのキッチンレス店舗の出店を強化していきます。従来のキッチン併設店に比べて、省スペースで店舗運営が可能となり、出店コストなどの制約が少なくなることから、出店が加速していくことを想定しています。

日本及び海外で新しい成長機会の創出に向けた挑戦を展開

昨年より、新しい成長機会の創出に向けた投資を積極的に行っています。2022年2月より暮らしの中で起こるトラブルに迅速に対応するため、鍵のお困りごとを解決する「ダスキンレスキュー」を、新たなブランドとして近畿圏で検証をスタートさせました。また、同年11月に、水まわりのトラブルに対応する駆けつけサービス等を展開する株式会社クラシアンとの業務提携、及び同社の持株会社への出資を行いました。同社との事業の親和性があると判断し、新たなお客様にサービスをご提供するための出資です。

今後、引越し退去時の清掃や鍵の交換サービスとクラシアンの水まわり事業とのコラボレーションなど、さまざまな事業やサービスの組み合わせを通じて、従来のビジネスの発想を超えた新たな価値を生み出していく考えです。

また、海外戦略については、新たな成長機会として、アフターコロナを見据えて、成長の芽をしっかり育てていきます。具体的には、R E & S Enterprises Pte Ltdとミスタードーナツ事業のシンガポールにおけるマスターフランチャイズ契約を締結し、展開を図ります。更に、台湾では「家庭向けお掃除サービス」の導入をしました。

このほか、海外向けのECサイトの展開も進めているところです。巨大市場である中国については、ゼロコロナ政策が緩和された中でアプローチを再開しています。また、東南アジア諸国については、所得水準が日本を超える地域が出てきており、市場としてのニーズは十分あると考えます。それぞれの国や地域の顧客層に向けて、当社がどのような商品・サービスで強みを発揮できるのか、検討しているところです。

海外事業について期待していることは、国内と同様に「ONE DUSKIN」に基づく取り組みが進んでいる点です。海外のクリーンサービス事業の展開拡大とともに、ケアサービス事業にも注力しています。「ONE DUSKIN」の理念を日本から世界へ広げていくことで、事業拡大の可能性を追求していきます。

一方、DX推進による生産性向上も重要課題です。2024年3月期中に、モップ・マットのレンタル商品約3,100万枚すべてにRFID(電子タグ)を取り付け、手作業の検数作業や棚卸し業務の効率化に向けた取り組みを加速させます。RFIDの取り付け費のほとんどは原価計上となるため、一時的な減益要因となるものの、中長期の成長及び就業人口減少対策として欠かせない戦略投資であることをご理解いただきたいと思います。

人的資本経営を更に推進し、持続的な成長に向けた人材基盤を強化

中長期にわたる持続的成長に向けて、当社では新たなビジョンの策定を進めており、サステナビリティ経営の強化に取り組んでいます。

特に重要課題である人材基盤の強化については、人的資本経営の観点から時代の先を見据えた取り組みを進めています。2022年4月に人事制度を刷新し、「より責任のある仕事をしたい」という社員へのモチベーションアップとキャリア形成を会社全体で支援することを目的に、入社3年目以降どの年齢、等級からでも管理職に登用が可能となる昇格制度を導入しました。また、新規事業やDX、CX(顧客体験)に関するアイデアを社員から募集するなど誰でもチャレンジできる風土を形成したいと考えています。

ダイバーシティ&インクルージョンについては、目標を設定して取り組んでいます。創業当時から年齢や性別、身体上のハンディキャップなどを問わず活躍できる組織を目指してきました。多様な考え方や価値観を認め合い、職場においては公正に評価され処遇されると同時に、能力や経験を十分に発揮できる環境づくりを推進しています。

一方、環境に関する課題については、2030年に向けたダスキン環境目標を設定しており、進捗管理をしっかり行いながら、毎年見直しをしています。また、コーポレートガバナンスに関しては現状、コーポレート・ガバナンスコードをすべて順守しており、今後コードの見直しに際しても上場企業の責務として誠実に対処いたします。

「中期経営方針2022」は、「ONE DUSKIN」を旗印とした長期戦略の総仕上げにあたります。当社グループのすべての事業が一つになって、ホスピタリティあふれる対応ができる企業になるために、中期経営方針の施策を着実に実行してまいります。ステークホルダーの皆様には、引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2023年7月
株式会社ダスキン
代表取締役 社長執行役員
大久保 裕行