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「この街にダスキンがいてよかった」
そう想っていただける社会を目指す
当社は、2025年3月期で10年間にわたる長期戦略「ONE DUSKIN」を終え、新たなフェーズへとシン化するために、これからの将来を見据えたパーパス(社会的存在意義)・ビジョン(担うべき役割)を策定しました。また、これらを実現するため、長期経営戦略「Do-Connect」及び2028年3月期を最終年度とする「中期経営方針2028」を策定しました。これからも全社員と全国のフランチャイズチェーン加盟店の皆様とともに、パーパスに掲げる「人に社会に寄り添い、安心と喜びのある豊かな明日の創造」を進めてまいります。
長期戦略「ONE DUSKIN」の基本的な考え方は、それぞれの事業が創出する価値を高めつつ、すべての事業・サービスが一つになってご要望にお応えする「ALL FOR ONE」を目指して、複合的にお客様に新たな価値を提供することです。
この10年間を振り返ると、訪販グループでは新たにタグライン「衛生環境を整える」を打ち出し、「ONE DUSKIN」を通じて新たな可能性を見出すことができました。その好事例がコロナワクチン接種会場の設置と運営です。イベント総合サポートを行うダスキンレントオール事業が中心となり、衛生用品のレンタル・販売を行うクリーンサービス事業、施設の衛生管理を手掛けるサービスマスター事業が一体となって、会場の衛生管理を提案し、商品・サービスを提供させていただきました。同様にさまざまなイベントやコンサート会場においても「イベント衛生サービス」や、災害時に避難所の衛生状態もサポートする「防災サポートサービス」を自治体と締結させていただき、多くのお客様のお役に立つことができました。
コロナ禍が終息してからは、クリーンサービス事業においては、現在のお客様係に加え、新規顧客開拓活動を強化する「家庭用営業専任組織」の展開や、デジタル接点機能を強化し、リアルとデジタルの両面からお客様との接点を広げています。また、昨年は「ペット用おそうじモップ」を販売し、お客様には大変好評をいただいており、社会環境の変化、お客様のニーズにしっかりと対応を行ってまいりました。
フードグループでは、主力事業であるミスタードーナツにおいて、2016年に「100円セール」を廃止し、ドーナツの新たな価値を付加する施策を打ち出しました。宇治茶専門店「祇園辻利」に代表される最高水準の素材と技術をもつブランドとの共同開発“misdo meets”を2017年から展開し、更には、長年お客様に支持をいただいている定番商品のブラッシュアップに取り組み、商品価値の向上に取り組んでいます。そして、ドーナツをおいしく食べていただけるよう、居心地の良さに重点をおいた新たな店舗への改装促進やお客様の利便性向上を目的にミスドネットオーダーの導入等、新たなブランド価値の向上が、おいしさとお客様のワクワクする気持ちを喚起し、事業成長につながっています。
海外市場に目を向けると、ミスタードーナツ事業はタイ、フィリピン、台湾、インドネシアに続き、シンガポール、香港で事業展開を始めました。またマレーシアとカンボジアでは、ハラル認証に対応した海外ドーナツブランド「Big Apple」を当社100%子会社として展開しています。今後も、ミスタードーナツ事業は東南アジアを中心に未展開地域への進出を進めるほか、イスラム諸国に対しては「Big Apple」を軸に事業展開を進めていく考えです。また、訪販グループが展開する「家庭向けお掃除サービス」については、すでに導入した台湾を中心に、今後、更に未展開国へと進出を図り、訪販グループ、フードグループともに海外事業を拡大してまいります。
「ONE DUSKIN」を通じて築いた事業横断の連携やサービス品質向上の取り組みをベースとして、新たなフェーズでは、これらの資産を更にシン化させ、より一層お客様に喜ばれるダスキンを目指してまいります。
今後更に注力すべき課題の一つがデジタルの更なる活用です。訪販グループではRFID(電子タグ)を、流通する2,400万枚の「レンタルマット・モップ」へ取り付けが完了しました。これにより、お客様から回収した使用済みマット・モップの加盟店での検数確認や、洗浄工場における受入・出荷時の検品・検数など、サプライチェーン全体において、作業の負荷軽減が可能となりました。フードグループのデジタル活用については、ミスタードーナツ事業において東京・信濃町に無人決済レジシステムを導入した検証店をオープンしたほか、既存店でも、AIによる画像認識登録レジの検証をスタートし、レジ業務の効率化を図っています。
更に、社内の情報システム部門を集約し、クラウドシフトを図りながらDX推進を加速度的に進め、更なる生産性の向上を目指します。デジタルを介した効率化によって新たに生まれた時間で、私たちはより一層お客様に寄り添い、パーパス(社会的存在意義)・ビジョン(担うべき役割)の実現を追求していきます。
もう一つの課題が人財の確保・育成です。少子高齢化が進む国内市場では、シニア世代あるいは共働き世帯などのお客様から、プロのお掃除や家事代行、庭木のお手入れ、住まいのピンポイント補修などのケアサービス事業への需要が増加しています。しかし、需要が集中する繁忙期には、サービスを提供する人員体制を確保できず、お客様にご不便をおかけする事例が少なからず発生しております。
当社のサービスは主に「人」によって提供されます。労働人口が減少する中においても、安定したサービス提供を実現するために、資器材やシステムの効率化を図るとともに、人財の確保とサービススキル向上のための教育に注力しています。これからは、今まで以上のスピードで社会環境や暮らしの形が大きく変化していきます。当社もまた、環境の変化を敏感に捉え、お客様や社会とのつながり方を柔軟に変化させていく必要があります。大切なことは、環境変化に追いつくだけではなく、求められる価値を付加していくこと。当社は創業以来、さまざまなチャレンジによって成長してきました。この想いは変わりません。これからもその志を胸に、変化を恐れず、一歩先を見据えてシン化を続けてまいります。
当社は、1963年の創業時より、祈りの経営という企業理念のもと、事業活動を続けています。祈りの経営とは、お客様や共に働くすべての方に、感謝の気持ちを持つことです。創業者・鈴木清一は、利益は喜びの取引から生まれるものと考え、ダスキンの仕事に関わる全ての人が幸せになってほしいという願いから、「喜びのタネまき」をスローガンに掲げてきました。2024年11月には、当社のこれからの将来を見据え、パーパス(社会的存在意義)・ビジョン(担うべき役割)、長期経営戦略を策定し、2025年4月からスタートしました。パーパスは「人に社会に寄り添い、安心と喜びのある豊かな明日を創造します。」、そしてその実現のために私たちが担うべきビジョンを「人と人、人と社会、人と明日をつなぐ笑顔の環を届けます。」と定め、これらを実現するための新たな長期経営戦略「Do-Connect」を掲げました。これらは当社の未来を担う中堅社員で構成されたプロジェクトが中心となり議論を重ね、策定プロセスでは社外取締役にもご意見をいただくなど、多様なメンバーによる議論を通じてできたものです。
ビジョンにある「人と人、人と社会、人と明日をつなぐ笑顔の環を届けます」の中心となるのが加盟店、そして働いていただいている方々です。当社は人のつながりを大切にする事業体ですが、このビジョンには、地域に密着した加盟店の組織を通じて、私たちが地域社会とつながり、そして、今日、明日、明後日、1年後を大切につないで生きていくという想いが込められています。私たちの「喜びのタネまき」は、一度花が咲いたら終わりではありません。常にタネをまき続け、さまざまな形の喜びの花、大きな笑顔の花を咲かせることで、お客様に「この街にダスキンがいてよかった」と想っていただける社会を目指します。
また、ビジョンをもとに、訪販グループやフードグループのビジョン、更に各事業のビジョンも作成すると同時に、ロジックツリーを策定しています。そこから事業戦略の策定や社員一人ひとりの活動目標・KPIに落とし込み、社員一人ひとりの行動・成果がグループビジョンや更に会社全体のビジョン、長期経営戦略「Do-Connect」の実現につながるよう、全社員が一体となり実現に向けて取り組んでいます。
同時に、ビジョンを実現するために、全社員に対して、3つの「シン化」のいずれかへの挑戦をお願いしました。3つの「シン化」とは、未来の新たな社会価値の創造に挑戦する「新化」、ビジネスモデル変革による新たな顧客価値の創造に挑戦する「進化」、お客様との関係強化による顧客価値の向上に挑戦する「深化」です。
「新化」では、2023年に子育て支援施設を展開するJPホールディングスと資本業務提携契約を締結しました。両社の事業・ノウハウなどの強みを活かした新たな事業に挑戦したいと手を挙げた子育て中のメンバーで構成する新規事業開発プロジェクトを創設しました。子育て中のご家庭や保育施設向けの新サービスの検討が進むなど、社会課題を解決する新たな事業の開発に取り組み、社会価値の創造に挑戦をしています。
また、「進化」では、住まいの快適化を支えるハウスメンテナンス領域への進出や、とんかつレストラン「かつアンドかつ」・イタリアンレストラン「ナポリの食卓」などを新たな地域へフランチャイズ展開を図るとともに、従来とは異なる立地・客層・利用動機に応える新たな飲食ブランドの開発やM&Aを通じて、更なる顧客価値の創造に取り組んでいます。
そして、3つ目の「深化」においては、家庭用モップ「スタイルフロア ララ」を中心とするレンタル商品は、全国約400万世帯のお客様にご利用いただいておりますが、昨今は共働き世帯が増え、日中にお客様と直接お会いできないケースが増えています。デジタルを活用したコミュニケ―ションでお客様とのながりを強化しながらも、直接、お客様の困りごとや、ご意見・ご要望をお聞きすることを大切にしています。お客様の声を活かした新商品の開発、商品の改良に取り組み、お客様との関係強化による顧客価値の向上に挑戦する「深化」を進めています。
創業者は「通さぬは通すがための道普請」という言葉を遺しています。道普請(みちぶしん)とは道路工事のことで、「工事で一時的に通行止めにしているのは、道の不具合をきれいに工事して、より良い道に整え、そこを通る皆に喜んでもらうため」という意味です。この言葉から私は、どのような困難な課題に直面しても、それは自身の想いを前に進めるために鍛えてくれているのだと捉え直す心持ちを学び、今では最も大切とする座右の銘になっています。
そして、パーパス、ビジョンとともに新たに策定した大切にする価値観(バリュー)「想いを今、動かせ。」には、プロジェクトメンバーが議論を尽くした熱い想いが込められており、すばらしい価値観です。これからもダスキンが、ダスキンであり続けるために、ダスキンは挑戦します。そして、加盟店と共に「想い」を動かしダスキンは「シン化」していきます。
現代の社会環境の変化を踏まえつつ、私たちダスキンは、「人と人」「人と社会」「人と明日」をつなぐ存在となり、安心と喜びのある豊かな明日の実現を目指し、長期経営戦略「Do-Connect」の下、お客様の想いをつないでいきます。これまで以上に、お客様との対話やコミュニケーションを大切にしながら、お客様との信頼関係を高め、「この街にダスキンがいてよかった」という社会の実現を目指していきます。
ステークホルダーの皆様には、引き続き変わらぬご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。