
資本コストおよび株価を意識した経営を通じて、
M&Aをはじめとする成長投資を積極的に展開し、
中長期の持続的な成長を実現してまいります
- 取締役 CFO
本社財務グループ担当 - 宮田 直人
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2024年3月期の業績につきましては、全体として計画通りに着地しました。コロナ禍を背景に業績が落ち込んだ訪販グループの回復はやや足取りが遅いものの、フードグループが増収となったことにより、連結売上高は前期から4.9%増加し、1,787億82百万円となりました。フードグループについては、2017年からシリーズ展開している、他社との共同開発である「misdo meets」が好調で、マーケティング戦略を通じた付加価値の高い商品展開が売上増に寄与しています。加えて、原材料費などの高騰を踏まえて価格改定を実施しましたが、おかげさまでお客様のご支持をいただき、こちらも売上増に貢献しています。
利益面につきましては、フードグループの増収にともなう売上総利益の増加が寄与しました。一方で、当期の主な取り組みとして、流通するマット・モップ商品にRFID(電子タグ)を取り付けました。取り付け後の運営に関しましては、能登半島地震の影響により若干の遅れが生じましたが、7月から開始しております。連結営業利益については、RFID(電子タグ)の取り付けにともなう大幅な原価増に加えて、適格請求書等保存方式(インボイス制度)対応にともなうシステム関連費用、人件費、運賃などの経費が増加したことから前期から41.1%減少して50億84百万円となり、連結経常利益は前期から30.9%減少して78億63百万円となりました。
また、石川県にある連結子会社が地震で被害を受けたことにともない特別損失を計上したことで、親会社株主に帰属する当期純利益については、前期から36.4%減少し、45億74百万円となりました。
なお、RFID(電子タグ)への投資に関しては、大半を当期の費用として計上しています。投資にともなう利益面の直接効果としては、マット・モップの数量確認にかかる手間が省力化できることから、協力工場に支払う委託加工料、すなわちマットなどの洗浄に必要なコストが引き下げられます。当期に計上した投資は数年以内に回収できる見込みです。
さらに訪販グループでは、2023年3月期から家庭市場の新規開拓を目的として立ち上げた営業専任組織が、成果を上げています。そこでこれまで直営店と関係会社で展開していたことに加えて、2024年3月期からは加盟店でも同様の取り組みを始めました。今後、営業活動を強化していくことで訪販グループの収益性を高めていくものと期待しています。
2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | ||
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連結売上高 | 百万円 | 159,102 | 153,770 | 163,210 | 170,494 | 178,782 |
連結営業利益 | 百万円 | 6,577 | 4,651 | 9,899 | 8,637 | 5,084 |
連結経常利益 | 百万円 | 7,929 | 6,633 | 12,215 | 11,375 | 7,863 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 百万円 | 5,591 | 2,821 | 8,132 | 7,196 | 4,574 |
自己資本比率 | % | 76.6 | 77.2 | 76.1 | 76.6 | 76.3 |
自己資本当期純利益率(ROE) | % | 3.8 | 2.0 | 5.5 | 4.8 | 3.0 |
総資本当期純利益率(ROA) | % | 2.9 | 1.5 | 4.2 | 3.6 | 2.3 |
1株当たり期末株価 | 円 | 2,841 | 2,785 | 2,689 | 3,190 | 3,299 |
株価収益率(PER) | 倍 | 25.84 | 48.7 | 16.33 | 21.83 | 34.72 |
株価純資産倍率(PBR) | 倍 | 0.99 | 0.94 | 0.88 | 1.02 | 1.03 |
「中期経営方針2022」の進捗状況につきましては、現時点でほぼ計画通りに進捗しています。ただし、成長戦略のうち成長投資については、3年間の計画として490億円を掲げ、うちM&Aを200億円規模と想定していましたが、この2年間の実績は146億円となります。
2024年3月期については、全国で300ヵ所を超える子育て支援施設を運営する株式会社JPホールディングスの株式を取得し、持分法適用関連会社化するなど、104億円の投資を行いました。JPホールディングスの案件については、訪販グループの事業展開において若い世代のお客様へのアプローチが重要であることを狙い、中長期にわたる成長とグループ間のシナジーを見据えた投資となっています。また、フードグループでは、北関東を中心にイタリアンレストラン「ナポリの食卓」を運営している株式会社ボストンハウスの管理統括会社である、健康菜園株式会社を子会社化しました。これまで培ってきたノウハウを活用して出店地域を拡大し、フランチャイズ展開も視野に入れて進めていきたいと考えています。
海外事業展開については、訪販およびフードグループとも中国、東南アジアを中心にマスターフランチャイズが着実に拡大していますが、資産としての投資は生じていません。
「中期経営方針2022」の最終年度、さらに次期中期経営方針に向けては、安定した営業基盤を維持していくものの、人件費や原材料の高騰が不確定要因ととらえています。そのために今後、価格転嫁が可能な商品とサービスの開発が必須であると考えます。また、金利の上昇についても、金利が上がることで、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様の期待リターン(株主資本コスト)が上がることから、さらに一段上の水準を目指した投資が必要と考えます。また、当社は全国にフランチャイズチェーンを形成してビジネスを展開しており、フランチャイズ本部の使命として、災害等が発生した際にはフランチャイズチェーンを維持し、加盟店の復旧支援や運営支援を行うための資金に加え、事業において後継者不在の課題を抱えている加盟店の事業譲受等が必要になる場合もあることから、一定規模の内部留保を確保しています。さらなる不測の事態に備えては、金融機関からの調達余力も十分に有しており、引き続き財務の健全性維持に努めていきます。
今後の成長戦略として、当社では成長投資に向けた体制づくりを整えています。とくに私が議長を務めています投資評価会議においては、昨年一年間にわたり投資評価の枠組み、体制を見直しました。これによって、投資時の評価はもちろん、投資後のモニタリングについても実効性のあるものとなり、取締役会の事前検討決裁機関として機能していくものと考えます。加えて、M&Aに関しては、新規事業開発部が中心となって案件の情報収集や管理を一元的に行う体制を整備し、今後は、成長戦略に資する案件の吟味を効果的に行っていく考えです。なお、現状における健全な財務のもとでは、数十億円程度のM&A案件について自己資金で十分対応することが可能です。
投資評価会議での議論において、一般的な投資案件について例外はあるものの、10年で回収できることを投資可能な基準と考えます。
次の中期経営方針を見据えたキャッシュアロケーションとしては、成長投資および株主還元のバランスを図りつつ、株主価値を高めるよう適正な配分を検討していきます。PBRを向上させるには、株主の皆様に対する配当を引き上げていく必要があると判断し、2022年3月期から配当性向を引き上げるとともに、総還元性向の向上を図ってきました。この点、株主の皆様から一定の評価をいただき、株価も上昇基調となったと考えます。今後も投資と内部留保、そして株主還元の割合について、DOEの指標を踏まえつつ、どのような形が適正であるかを判断してまいります。
すべての政策保有株式について、毎年、個別銘柄ごとに業務提携、取引の維持・強化等事業活動上の必要性および当社の資本コストや発行会社の株価動向等を勘案し、保有の適否を取締役会で検証を実施しています。連結純資産比率が上昇傾向にあるのは、主に保有している上場株式20銘柄の評価益の拡大によるものです。
当社の過去10年間の株主リターン(Total Shareholders Return:TSR)については、東証株価指数(TOPIX)を下回る収益率となっています。この点につきましては、前述の通り、財務の健全性を維持しつつ、事業ポートフォリオの変革や実効性の高いM&A実現に積極的に取り組んでいます。引き続き、収益性の向上と安定的な配当の実施を継続するとともに、株主資本コストを上回るTSRを実現できるよう実効性の高い財務戦略を実行し、株価を意識した経営に取り組むことで、株主価値の向上に努めていきます。
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | ||||
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累積 | 年率 | 累積 | 年率 | 累積 | 年率 | ||
ダスキン | 6.6% | 28.2% | 8.6% | 39.1% | 6.8% | 95.9% | 7.0% |
TOPIX | 41.3% | 53.4% | 15.3% | 96.2% | 14.4% | 142.1% | 9.2% |
将来の成長に向けて、成長戦略の推進とともに、人材ポートフォリオの変革に向けた投資を積極的に進めているところです。人材の獲得競争が激しくなる中で、新卒採用だけに頼るのではなく、即戦力となる中途採用にも注力しています。とくに商品開発や加盟店運営のスーパーバイザー、さらにはDX戦略や海外展開を担う人材の強化を図っています。
また、社員にとってより魅力的な企業となるために、人事システムの刷新や人事制度の見直しを進めています。
今後は、人材の獲得と育成に加え、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に配慮した人事戦略を展開していきます。多様な人材が互いに切磋琢磨しながら、可能な限りコンパクトな組織体制のもとで、生産性の高い事業運営を目指します。
人材への投資と同様に、CSV(経済価値と社会価値の両立)を加速する上で、サステナビリティへの投資も非常に重要だと考えています。サステナビリティ関連の投資は短期的にはコストがかかるかもしれませんが、長期的な持続的成長のためには欠かせない取り組みです。ESG経営を推進するため、重要課題(マテリアリティ)に対する取り組みを着実に進めていきます。