積極的な投資と機動的な財務戦略により、更に成長を加速させ、企業価値の最大化を目指します。
- 取締役 CFO
本社管理グループ担当 - 宮田 直人
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2023年3月期の業績につきましては、概ね計画通りに推移しました。これは、円安の進行や原材料費が高騰する中で、グループ全体で総力を挙げて目標にコミットし、かつ地道な努力を積み重ねてきた成果ではないかと考えます。
また、お客様に安定的に商品を供給するため、訪販グループ主力のクリーンサービス事業及びフードグループ主力のミスタードーナツ事業の一部商品の価格改定を円滑に実施できたことから、業績を下支えしたといえます。
売上高については、コロナ禍からの経済活動の正常化が進みつつある中、すべてのセグメントで増収となりました。特に、ミスタードーナツ事業の商品戦略が効果的に機能したことで、業績を牽引しました。加えて、新規出店により1,000店近くまで稼働店舗数が増加したことも売上増に寄与しました。
一方、利益面においては、コロナ拡大以前のように営業活動、販売促進活動を強化したことによる経費増が影響していますが、これは前向きな先行投資と捉えています。加えて、訪販グループの戦略投資となるRFID(電子タグ)の取り付けを進めたことで、計画通りではあるものの、約11億円の売上原価増となったことが減益要因となっています。
減益にはなりましたが、1株当たりの配当額は、連結配当性向60%の配当方針に基づき、3期連続の増配となる年間88円(前期比プラス5円)としました。
(単位:百万円) | 2023年3月期実績 | 前期増減(%) | ||
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連結 | 訪販グループ | 売上高 | 108,469 | 1.3 |
営業利益 | 8,114 | △23.0 | ||
フードグループ | 売上高 | 48,879 | 11.6 | |
営業利益 | 5,473 | 51.2 | ||
その他 | 売上高 | 16,229 | 5.3 | |
営業利益 | 702 | △19.5 | ||
セグメント間取引消去及び全社費用 | 売上高 | △3,085 | ー | |
営業利益 | △5,652 | ー | ||
売上高 | 170,494 | 4.5 | ||
営業利益 | 8,637 | △12.7 | ||
連結経常利益 | 11,375 | △6.9 | ||
親会社株主に帰属する当期純利益 | 7,196 | △11.5 |
2024年3月期につきましては、経済情勢が目まぐるしく変わる中で、事業機会とリスクについてこれまで以上にタイムリーに情報をつかみ、迅速な意思決定のもとで事業を展開していくことの重要性を認識し、引き続き目標の達成に向けた取り組みを加速させていく考えです。
訪販グループにおいて、クリーンサービス事業の家庭市場の更なる開拓に向けて全国の直営店、関係会社で検証導入した営業専任組織が成果を上げていることから、今後は全国のフランチャイズ加盟店への拡大を図ります。特に同事業の家庭市場の動向は、全社業績に関わる大きな課題と捉えています。併せて、フードグループについては、ミスタードーナツ事業が好調を維持しており、引き続き増収を計画しています。
一方で、利益面につきましては、物価上昇の影響がマイナス要因の一つと捉えています。加えて、ベースアップによる人件費の増加が減益要因となりつつあります。特に急激な人手不足を背景に、パート・アルバイト等の人件費が大幅に高騰していることが懸念されます。
人件費に関していえば、課題の一つとして、本社部門の業務の抜本的な改革により、生産性を高めることで間接費の削減を進めます。この点については、人的資本経営を踏まえつつ人材ポートフォリオをどのように変えていくか、社内で議論を進めているところです。今後、人材の採用・育成ともに、中長期的な課題として「中期経営方針2022」の期間中に方向性を示していく考えです。
なお、2024年3月期の売上高は前期比4.8%増の1,787億円を見込む一方、RFID(電子タグ)の戦略的投資によって、一時的に大幅な売上原価増となることから、親会社株主に帰属する当期純利益は38.9%減の44億円となる見込みです。
重要な戦略投資としては、前述の通り、2024年からの本格的な運用開始に向けて、流通している約3,100万枚すべてのモップ・マットのレンタル商品に取り付けるRFID(電子タグ)を導入します。これによって、洗浄工場のスマートファクトリー化に向けて大きく前進することとなります。
RFID(電子タグ)取付費用は、少額減価償却資産として計上することから、一時的に約42億円の売上原価増となり、2024年3月期の営業利益は前期比47.9%減の45億円になる見込みです。
一方で、運用開始後の2025年3月期については、取り付け費用の減少及び業務改善効果、その他の増収効果等により、営業利益は前期比166.7%増の120億円を計画しています。
なお、コスト負担の平準化が困難であるため、「中期経営方針2022」の3年間につきましては、安定的な現金配当を継続することを重視した配当方針に変更しました。
具体的には、配当額を連結配当性向60%に加えて、下限指標としてDOE(自己資本配当率)2.5%を設けて、いずれか高い額としました。これにより安定的な配当が実現できます。また、機動的で弾力的な自己株式の取得を積極的に実施するとともに、3年間累計の総還元性向100%以上を目標に利益還元を行っていく方針です。
配当方針において、株主・投資家の皆様のご理解をいただいたおかげもあり、足下の株価が堅調に推移しており、PBR(株価純資産倍率)についても1倍を維持していることから、財務戦略が功を奏していると考えています。(2023年3月期 期末株価3,190円、PBR1.02倍)
政策保有株式については、保有する合理性があると認める場合に限り、適切な数の株式を保有することとしており、合理性が認められない銘柄については適宜、当該企業との対話を通じて縮減または売却する方針としています。政策保有株式の銘柄数は、2018年3月期に25銘柄ありましたが、2023年3月期には20銘柄まで減少しました(5年間で5銘柄の縮減)。
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
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自己資本比率 | 77.0% | 76.6% | 77.2% | 76.1% | 76.6% |
自己資本当期純利益率(ROE) | 4.0% | 3.8% | 2.0% | 5.5% | 4.8% |
総資本当期純利益率(ROA) | 3.1% | 3.0% | 1.5% | 4.2% | 3.6% |
株価収益率(PER) | 23.45倍 | 25.84倍 | 48.70倍 | 16.33倍 | 21.83倍 |
株価純資産倍率(PBR) | 0.92倍 | 0.99倍 | 0.94倍 | 0.88倍 | 1.02倍 |
株主総利回り(TSR) (比較指標:配当込みTOPIX) |
99.56% (94.96%) | 109.27% (85.94%) | 108.68% (122.15%) | 108.19% (124.57%) | 130.03% (131.82%) |
当社はこれまで、充実した自己資本のもとで堅実な経営を行ってきました。コロナ禍が収束に向かう現在、資本を機動的に活用し、国内及び海外の市場において事業拡大をすることに注力していきます。
コロナ禍において、さまざまな活動を通じて、社会に「衛生のダスキン」を広く浸透することができました。また、社会の安全・安心に対する当社の認知度の更なる高まり等を背景に、事業提携や出資の案件が多数寄せられており、大きな手応えを感じています。こうした好機を確実なものにしていくことで、更なる成長を追求します。
その最初の取り組みとして、2022年11月に、株式会社クラシアンとの業務提携及び持株会社であるNile Holdings株式会社(現 株式会社クラシアンホールディングス)の株式取得といったM&Aを通じて、資本の有効利用を進めています。
「中期経営方針2022」の3年間で490億円の成長投資を掲げていますが、投資評価会議の議長として、これまで以上に迅速な意思決定を行っていく考えです。また、M&A成立後のPMI(統合効果を最大化するための統合プロセス)を含めて、投資に対するモニタリングは重要な課題と認識しており、今後、適切に実施していきます。
また、「事業ポートフォリオの変革」に向けた取り組みにおいては、各事業の適正な評価が必須です。更に戦略に沿ったKPIの設定や、資本コストを意識した事業別精査、モニタリングについても、課題を先延ばしすることなく迅速に実行していきたいと考えています。
当社は、すべてのステークホルダーの皆様に対して真摯に向き合い、建設的な対話を通じて企業価値の向上を目指してまいります。中でも、株主・投資家の皆様に対しては短期的なリターンに加えて、中長期の観点からも持続的な成長を通じて利益還元に努めてまいります。つきましては、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。