未来に向かい挑み続けるダスキン

未来に向かい挑み続けるダスキン

1963年に創業し、モップなどの清掃用品のレンタルを日本に広めたダスキン。現在は家事関連の代行業務やシニアケア、イベントの企画運営、ミスタードーナツを中心とするフード事業など、多彩な事業をフランチャイズ展開する。これまでに手掛けた事業やプロジェクトは130を超え、誰もが挑戦できる風土があるという。スポーツ界で挑戦を続けてきた栗山英樹氏と大久保裕行社長が「挑戦」をテーマに意見を交わした。

やらないより、やって後悔

大久保
栗山さんのこれまでで一番大きな挑戦は何ですか。
 栗山
プロテストを受けてプロ野球の世界に飛び込んだことですね。高校、大学と野球の強豪校に行きたかったのですが、文武両道を求める両親の反対でかなわず、挑戦しなかった後悔がありました。その経験からやらないより、やって後悔することにしました。
大久保
その後も北海道日本ハムファイターズや侍ジャパンの監督を歴任され、様々な挑戦を続けていますが、挑戦する意義をどう考えておられますか。
栗山英樹氏
 栗山
僕は目的を達成するために難しいことに向かった時に幸せだと感じます。挑戦は自分のよさを引き出してくれると捉えているので、選手が苦しんで結果を出せずにいると「よかったな」と言ってしまうんです。できないことがあると頑張れるから、チャンスだと。
栗山英樹氏
大久保
当社はこれまでに130以上の事業やプロジェクトに挑戦してきました。現在、展開している事業は20ほどで、成功率は良好と考えていますが、打率でいうと1割5分程度。失敗しても貴重な経験として次に生かしていくという風土の下、自らやってみたいという社員を応援しています。
 栗山
野球だったら1割5分のバッターはとても使えません(笑)。ただ、失敗しても次に生かせばいいという考え方には共感します。

「喜びのタネまき」が多彩な事業へ

大久保
当社の展開する事業は一見関連がなさそうですが、すべて創業者が提唱した「喜びのタネまき」という考えに基づいています。社会の困りごとを解決し、一人でも多くの方に喜んでもらいたいという思いから様々な事業に挑戦しています。
 栗山
どの事業も「誰かに喜んでもらう」ことがベースにあるということですね。
大久保
そうです。創業者は社名を「ぞうきん」にしたかったという逸話があります。自分が汚れて相手をきれいにするという思いを込めたのですが、社員が猛反対。そこで英語でホコリを意味する「ダスト」にぞうきんの「キン」を付けて「ダスキン」という社名になりました。
大久保裕行社長
 栗山
由来をきけば、「株式会社ぞうきん」もすごく素敵ですね。
大久保
他に役職は「当番」という考えがあります。私は社長ですが、それぞれがその時々に与えられた役割を果たすことが大切です。
 栗山
僕も「監督は偉くもなんともない。最後に物事を決める係だ」と言っていました。現場でチームが組織として同じ方向へ進むためには、役割をはっきりさせなければなりません。
大久保裕行社長

3つの「シン化」をお客さまに

大久保
このほど長期経営戦略を「Do-Connect 人と人、人と社会、人と明日をつなぐ」とし、挑戦テーマとして3つの「シン化」を発表しました。新たな事業を開発する「新化」、既存事業を変革する「進化」、既存事業を深める「深化」です。すべての「シン化」はお客さまの喜びにつながります。
 栗山
僕の場合は信じる「信化」ですね。監督として新しいことを次々にやったといわれますが、選手の個性を生かし、チームが勝つために、常識にとらわれなかっただけ。選手のために尽くせば、選手はチームのために成果を出してくれると信じていました。
大久保
当社はブランドを支えるのは人であり、お客さまとのつながりが大切だと考えています。テクノロジーもつながりを深める手段。例えば、ミスタードーナツのテスト店で無人決済システムを導入し、スタッフがお客さまとコミュニケーションを深められるようにしました。
 栗山
野球選手はチームが最下位でも個人の成績が良ければ給料が上がるのですが、僕はこの意識を変えたくて選手に「論語と算盤(そろばん)」を配りました。「人のために尽くすことで、みんなのプラスになる」という思想を野球に持ち込みたかったのです。
大久保
昨日より今日、今日より明日、少しの気づきを行動に変えれば、お客さまにも仲間にも喜んでもらえるシン化につながります。最後に、今後はどんな挑戦をしたいですか。
 栗山
チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)としてファイターズに戻り、球団運営とチーム編成の両面から球団を強化する役割を担っています。どのような形が一番いいのか、模索しているところです。新しい、面白いことをやっていきますよ。
大久保
これからのファイターズが楽しみですね。ダスキンも日々挑戦し続けていきます。
2024年12月26日付け日本経済新聞朝刊掲載広告より転載