2023.4.28

記録写真が語る
ダスキン
ヒストリー
「ぞうきんを貸す会社」

記録写真が語るダスキンヒストリー

私たち、ダスキンは皆さんから見たらどのような会社に見えるのでしょうか。モップやマットをレンタルし、エアコンのクリーニングやお風呂の掃除を頼める会社、いやいや、イベントも頼めばできるらしいし、高齢者の生活もサポートできる。あの全国にあるドーナツ店も実はダスキンが運営しているそう。結局何をしているのかよく分からない会社だなぁって思う人も多いかもしれません。

そこで不定期にはなりますが、ダスキンが生まれる少し前から現在に至るまでの私たちダスキンの歩みをできるだけ分かりやすく、この場をお借りして紹介できればと思います。
今回は3回目です。

chapter 03
ぞうきんを貸す会社

長年の願い

創業者の鈴木清一は、「お掃除は骨のおれるもので、これをもっと楽にできる方法はないものか」と長年考えていました。
「水を使わずに、静かに拭くだけでホコリをたたせずキレイに取る商品があれば、主婦を水拭きのお掃除から解放できるはず」

そこで鈴木清一は、長年の願いであった家庭用お掃除商品の実用化という大任を、新商品開発や研究受託を行う研究所の所長で金属や化学メーカーで新製品開発の実績を重ねていた知人に任せました。

鈴木 清一

1963年6月頃、鈴木清一は所長を事務所に招き、モップとダストクロスを見せ「軽く拭けば拭き取った汚れは移りませんよ」とハンドルのついたモップで壁を拭いてみせます。しかし、そのモップを握ると手に油がにじみました。

モップ:
商品第一号「サニクリーンロール」
業務市場向けダストコントロールモップ
ダストクロス:
「サニクリーンロール」に続いて発売した業務用大型クロス「サニクロス」

所長は、鈴木清一から「畳を拭いても油が移らない家庭用のダストコントロールぞうきん(化学ぞうきん)を半年でつくってほしい」と依頼されますが、「簡単には実現しないだろう」と思うと同時に、研究者魂に火がつきます。3坪ほどの場所を改装して開設された研究所に、所員1名を連れ、開発に着手します。

3坪の研究所から移転し、ダスキン吹田工場内に新設された6坪の研究室。実験器具もほとんどなく研究所と呼ぶには質素な設備だった。

家庭用にふさわしい機能の探求

ダストコントロールの基本的な仕組みは業務用も家庭用も同じで、油分をしみこませた布(繊維)でホコリを集め、吸いつけたまま、できるだけ離さないでおくこと。
1963年から発売されていた業務用のダストコントロール商品に使われている製法をベースにすることはできますが、家庭用にふさわしい機能(対象面への油分転移がなく、細かなホコリや綿ボコリに対応できる)を満たすためには改良が必要でした。
転移を防ぐために油分の量を減らすだけでは最低限の機能しか発揮できず実用できないため、量ではなく油剤などの性質を変える必要があると所長は考えました。

並行して油分をしみこませる繊維の開発を、紡績会社に依頼。
「良いものをつくろう!」と意見が一致し、シャツをつくるような上質の綿を原料に使うことに。
この“上質の綿”が、のちに商品化する再利用商品(機械や工具の拭き取り商品)にとっても、使い込まれた綿ならではの良い性能として活かされるのです。

所長と所員は、油分・クロス・製造技術とさまざまな問題の解決にあたりますが、納得のいく製品はなかなかできず開発は難航。
試行錯誤の研究を進めるなか、1964年1月に、開発中のこの家庭用貸しぞうきんを “ホームダスキン”と命名します。

当時の新聞広告

“貸しぞうきん”は家庭に受け入れられるのか?

家庭用商品第1号“ホームダスキン”は家庭に受け入れられるのか?製品が完成していないなかではありますが、テストマーケティングの計画を立てます。
公団住宅・アパート・高級住宅・会社寮・オフィス・町工場・商店街に至るまで、当時の日本のすべてのお客様モデルが揃う“東京”の山手通りと目黒通りが交差するあたりを調査地域に決めます。

気になるレンタル料金は・・・、
・2枚1セット、2週間レンタルで150円(初回のみ加入保証金150円をお預かりする)
つまりは1カ月で300円。当時、新聞代が1カ月450円、山手線初乗り料金が10円、1カ月平均の消費支出が5万円ほどという時代のこと。ぞうきんとしてはずいぶん高かったのです。

ホームダスキン

待ち受けていた現実と実演販売の効果

テストマーケティング初日の1964年6月15日、朝7時、 社員が“ダスキン”と書かれたバケツほどの大きさの容器に試作品のホームダスキンを入れ、自転車の荷台にくくりつけ、初めて家庭への訪問販売に出発!
精一杯頑張りますが、「貸しぞうきんなんて必要ない」と言われるばかりで契約に至りません。

ホームダスキンを詰め自転車の荷台にくくりつけ家庭への訪問販売に出発した

気を取り直し、翌日はセールス方法を変更して挑みます。
鈴木清一が過去に見返りを求めない奉仕による修行の日々を送っていた時と同じように、ホームダスキンを使い一軒一軒お掃除することに。
お掃除を断られても壁などを拭きあげて、帰りに「ありがとうございました!」と感謝の気持ちをお伝えします。
すると、その様子に気づいた近所の方が興味をもちだします。そこへすかさずアプローチ!実演販売を通じて徐々に契約件数が増えていき、1カ月後には200軒のお客様に契約をいただけたのです。

一方大阪でもテストマーケティングを実施します。
断り続けられる中、ようやく一軒の主婦が会ってくれました。
「押入れの古布でいくらでもぞうきんができる。そんなものに150円も出せない」 そう言う主婦の足元にあったホコリまみれの下駄。その下駄を「ホームダスキン」で拭いてみせます。すると下駄はみるみる輝きだします。更に壁を軽くひと拭きすると汚れがとれていきます。結果、この主婦が大阪で最初の契約者となりました。
その後も、この実演セールスが功を奏し、大阪でも成果をあげていくのです。

営業部隊が頑張るなか、所長が家庭用商品として優れた油分の配合にたどりつき、度重なる実験の結果、開発着手からわずか1年と少しの1964年9月、いよいよ家庭用お掃除商品の実用化にこぎつけます。

後に、この“貸しぞうきん”はマスコミに大きく取り上げられます。

そしていよいよ家庭用という新しいマーケットの開拓に本格的に乗り出していくのです。

その方法はいかに?

次回は…
主婦のニーズにマッチ
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Note

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また予告なしに変更されることがありますのであらかじめご了承ください。