め 目指そうよ みんなが輝く 素敵な未来

解説
SDGsは、世界をよくするために生まれた目標。みんなが幸せに暮らすために力を合わせることが必要です。

目指そうよ みんなが輝く 素敵な未来

みなさんは、ダスキン愛の輪基金をご存じでしょうか。
ダスキン愛の輪基金は、1981年ミスタードーナツ10周年、そして国際障害者年に設立された公益財団法人です。
障がいのある方の自立と社会との共生を願い、45年間にわたって活動しています。現在も、ミスタードーナツ各店に募金箱を設置し、毎年1月27日のミスタードーナツ創業の日には売り上げの一部を寄付するなど、支援の輪を広げる取り組みを続けています。

主な活動は、アジア太平洋地域の障がいのある方を日本へ招いて研修を行う「ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業」、そして日本の障がいのある方を海外へ派遣する「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」など、夢に向かって挑戦したい方々を応援する取り組みです。

「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」では、2024年までに542名の研修生を海外へ派遣してきました。研修には、自らの挑戦を1人で形にする個人研修コースと、グループで夢に挑戦するミドルグループコースの2種類があります。
どちらのコースも、渡航前に面接や語学試験があり、研修生は「何に挑戦したいのか」「研修後に何を実現したいのか」「どのように社会に貢献したいのか」といった内容を企画・計画し、面接でお話いただきます。

今回は、第23回個人研修生の田門 浩さんにお話を伺いました。田門さんは聴覚障がいがあり、コミュニケーションは手話で行います。現在は愛の輪基金の理事を務め、2025年1月からは国連障害者権利委員としても活動されています。

田門 浩さん
お話をお伺いした 田門 浩さん

田門さんが研修に参加した期間は、2003年7月~2004年3月の8ヵ月間。研修先は、アメリカのギャローデット大学を選びました。日本の大学を卒業し、弁護士として活躍する中で、研修への参加を決意したそうです。

編集者T:研修に参加しようと思ったきっかけはなんですか?

田門さん:アメリカにはADA法という、障がい者差別を禁止した法律があります。これは、世界で初めての包括的な差別禁止法です。学生の時からこの法律がアメリカにあることは知っていました。弁護士になってから、日本でもアメリカのADA法と同じもの作りたいと思いました。また、日本弁護士連合会でも障がい者の差別を禁止する法律を作るという動きが出てきた時期でした。そこで、アメリカの法律を学び、日本で法律を作りたいと思い、研修に参加しました。

編集者T:アメリカに行ってみていかがでしたか。

田門さん:日本では、以前は高校や大学に進学しようとしても「聞こえないから勉強できない」と思われ、受験を拒否されることもありました。社会には多くの壁がありました。
アメリカに渡ってからは、挑戦できる環境が大きく広がりました。ギャローデット大学在学中、政府委員会の審議で興味あるテーマがあり参加したいと相談したところ、通訳者を準備していただけることになり、実際に会議へ参加することができました。
アメリカは「チャレンジが大切」という考えなので、新しい試みに自然に取り組める環境があります。そこが日本との違いですね。

編集者T:アメリカで期待していた学びは得られましたか?

田門さん:はい、十分に学ぶことができました。ギャローデット大学は聴覚障がい者だけが入学できる大学です。私は社会福祉学科(ソーシャルワーク学科)に所属しました。そこで、アメリカの障がい者を取り巻く状況を幅広く学び、ADA法・IDEA法・社会福祉法なども体系的に勉強することができました。

編集者T:研修先はアメリカが一番適していましたか?

田門さん:適していました。ただ、勉強は厳しかったです。レポートも何本も提出しなければならず、なかなか通らず、何回も指摘を受けては書き直してやっと合格という感じでした。講義では生徒全員が必ず一度は発表する方式だったので、毎回教科書を何十ページも読み込んで準備しなければなりませんでした。さらに、アメリカのろう協会で週4回、インターンシップとして働きました。アメリカ政府からのレポートをまとめて上司に提出する業務でこれもまた厳しく、大変な経験でした。

編集者T:研修に行く前と行った後では、なにか変化はありましたか。

田門さん:アメリカに行く前は、壁にぶつかるとあきらめてしまうことが多かったです。でも、帰国後は壁に直面したとき、「どうしたら解決できるのか」と考えるようになりました。さらに、一人で抱え込むのではなく、「周りの仲間と一緒に解決しよう」という考え方に変わりました。アメリカにも当然壁はありますが、向こうでは仲間と協力しながら解決していく文化が根づいています。その考え方に触れたことが、大きな変化につながったと思います。

田門 浩さん

編集者T:今後チャレンジしたいことはありますか。

田門さん:日本も障がい者に対する差別は以前と比べて改善されています。しかし、合理的配慮については、まだ十分とは言えません。“障がい者だけの特権”だと誤解される場面もあります。
合理的配慮の目的は、障がいのある人とない人が“同じスタートラインに立つこと”です。そのうえで、スタートした後は障がいの有無に関係なく、同じ責任を担える社会になることが理想だと考えています。障がいのある人も社会に貢献できるのですから、公平なスタートラインを整えることが、とても大切だと思います。
私は2025年から国連障害者権利委員を務めていますが、障がい者の政策づくりには当事者が参加することが欠かせません。当事者の声なしに政策を決めてはいけない。その目線を政策に反映できるよう、これからもチャレンジしていきたいと思います。
また、企業で働く障がい者がこれまで以上に愛の輪基金の研修を受けられるといいな、と感じています。研修に参加するには、最大で1年間、日本を離れて海外に行くことになるため、職場の理解が不可欠です。そうした理解が自然に得られる社会になってほしいと願っています。

今回お話を伺い、一人ひとりが輝くためには、“チャレンジする気持ち”が何より大切だと改めて感じました。そして、誰もが輝く未来をつくるためには、お互いを認め合い、対話を重ね、相手を思いやる姿勢が欠かせないのだと、深く考えさせられた時間でした。

公益財団法人 ダスキン愛の輪基金

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