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(研究助手〈以下省略〉)おお、すごいぞスゴイ!やっぱり迫力あるなあ。
(博士〈以下省略〉)ん?何の写真を見ておるんだ?
はい、この前の休みに洞窟探検に行ってきまして、そのときに撮ってきた写真なんです。どうです、この立派な形状!
これは鍾乳石じゃないか。確かに立派なもんだな。
どうして自然にこんなものができるんですかね。神秘的だなあ…。
炭酸カルシウムが溶解している地下水が洞窟内にしみ込み、滴下することで、堆積したり、つらら状になったものだ。その成長スピードは100年に1cm程度と言われていて、これだけ立派なものだと数十~数百万年はくだらんね。
くだらんとは何ということを!(怒)
そのくだらんではない!くだらんことを言うな!(怒怒)
し、失礼しました。ところで博士、僕これに似たものを実家で見つけてしまったんです。
え?キミの実家には洞窟があるのか?
やだなあ、トイレでですよ。親孝行しようと掃除していたときに、小便器の目皿をはずして中を覗き込んだんですが、そこには規模は違うとはいえ、鍾乳石のようなものが…。ほい、この写真。
うっ、それは尿石だ。トイレ掃除が足りないとこうなるんだ。というか、よくこんな写真撮ったな、ニオイもきつかっただろう。
いや、自然の神秘に心惹かれてしまって、ニオイを感じている場合ではなかったもんで。
それは自然の造形ではないが…。まあいい、尿石ができる仕組みを教えてやろう。
ハイ!ぜひお願いします。僕のアパートで作ってみたいな。
やめとけ、後悔するぞ。
手間というべきか、まあ日ごろの蓄積じゃからな。ふだんからキレイにしておくことの大切さがよくわかるだろう?
そうですね。でも僕みたいなキレイ好きでないと、できちゃうでしょうね、鍾乳石。
キレイ好きが聞いてあきれるわ。そこで、わがダスキンでは、設置するだけで尿石の発生を抑える装置を作ったんじゃ。それがこれ。
お!小便器の横にすらっとしたものが。
そう、この装置で尿石の発生を抑えようというわけだ。
で、どうやって鍾乳石の発生を妨害しようってんですか?
おお、その場の環境を整えて、出鼻をくじこうというわけですね。
そう。ということで、先ほどの装置は定期的にpHを調整する薬剤を小便器内に滴下して、トラップ内のpHが 「アルカリ性」へと変化するのを抑制する効果を活用したものだ。この図はその仕組みをイメージ化したものなのだ。
な~るほど。こいつはうまいこと考えたもんだ。
できる前に「できない環境」を作ろうということ。着眼点の勝利ってわけだな。
わかりました。今回はあきらめます。
あきらめる?何を?
せっかくできた鍾乳石とさよならするのは残念ですが、家族には気持ちよく使ってほしいですから、潔くキレイを心がけて掃除します。
そうか、やっとわかってくれたか。
ハイ!その代わり、アパートのトイレで頑張って育てます、鍾乳石。
だから、やめなさいって。後悔するから。